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日本のODA(政府開発援助)

ODA(政府開発援助)―日本に何ができるか (中公新書) の要点をまとめます。


1.課題

(1)ODAの効果は、支援したプロジェクトだけを評価しても不十分であり、経済全体、少なくとも支援の対象となった地域や住民に与えたインパクトの大きさによりこれを評価する必要がある。

(2)開発途上国政府は開放的な経済体制を築き、外国投資の導入を図り、貿易を拡充する必要がある。

(3)政情不安などによって投資不適格とみなされれば、資金は一気に国外に流出する危険性がある。

(4)多くの開発途上国では、①官僚の意欲が低い、②政策が社会状況や発展段階によって異なる、③政策立案に必要な情報や分析能力をもったスタッフが足りない、という課題がある。

(5)政策課題として、貿易自由化や資本自由化だけでなく、為替、金融、産業、企業統治、税制、環境、知的財産権、汚職、地方分権、司法などに対する取り組みをあらためて問われるようになってきた。

(6)経済成長には市場が必要だが、市場を成長させるにはその機能を効果的に補完する制度、ならびにそれを構築する能力をもつ政府が必要である。

(7)制度構築を支援するには、ODAにおける知的支援の比重を高めることが必要である。

(8)日本の知的支援
①法制度、行政制度などを紹介し制度形成のための研修を行うこと
②市場経済の運営・行政管理の分野で研修生を受け入れること
③政策助言を行える専門家を派遣すること
④政策の開発や研究について助言すること


2.世界銀行

(1)ODAによって一人当たりの所得を増加させるためには4つのガバナンスが重要であるとしている。
①法の支配(rule of law)
②透明性(transparency)
③説明責任(accountability)
④市民社会の参加(participation)

(2)経済開放度、インフレ率、制度の質(汚職、法の支配、財産没収の危険性、政府の契約執行の不確実性、官僚の質などの度合いを指数化したもの)が一人当たりのGDPの伸び率に関係している

(3)貧困削減の支援を貧困層への教育・医療の充実、さらに貧困層を経済成長に参加させるエンパワメントという二段構えで捉えている。
(エンパワメントとは、基礎教育の提供、社会的弱者の保護、組合などの社会的組織や行政への参加などを通じて、貧しい人々が自らの生活を自ら設計する能力を獲得すること。)

※日本は白書の中で貧困削減と経済成長とは不可分だという立場をとる。


3.日本のODA

(1)日本のODAの特徴として、高い借款比率、インフラ重視(経済インフラ)、東アジア重視(地理的、歴史的、経済的な関係を反映している)
(借款(政府貸与)とは、低利かつ長期返済という緩やかな条件での資金の融資のこと)

(2)バンコク市内の32%に相当する高速道路、韓国の56%に相当する下水道施設が円借款によって建設された

(4)日本にとって中国はインドネシアに次ぐ第二位のODA供与国である。

(5)2002年までの円借款の累計で中国にはこれまで約3兆円の資金が貸与されている

(6)中国の軍事費の増大や中国自身が政治色の強い援助を実施している

(7)日本のODAについて十分な広報がなされていないため、一般の市民に認知されておらず日本のODAに対する感謝もない

(8)日本のODAの活性化のためには、企業、地方自治体、大学、研究機関、NGOなど国民諸階層のODA活動への積極的な関わり、つまりは国民参加が中心概念とならなければならない

(9)ODAにより日本が享受するメリット
・資源確保(鉱物・海洋資源)
・日本外交への支持(国際的なルールの策定、国連の安全保障理事国への就任、国際機関の人事などの投票行動への影響)
・親日感情の醸成
・相互依存関係の深化(貿易、投資、人材など)
・地位の安定と平和に支えられた持続的な発展
・環境保全

(10)プラスの制約
・高い資源の海外依存度
・自由貿易のメリット享受者
・外国直接投資を通じての生産ネットワークの展開

(11)マイナスの制約
・厳しい財政事情
・高まる批判(実行体制や効果、透明性など)


4.日本のODA批判の論点

(1)大規模開発に伴う環境破壊や住民移転に対する反感
・インドネシアのコタパンジャン・ダム建設の際、日本政府は約230億円を貸与した。1998年から操業したが、インドネシア政府は、住民移転に対する補償金の未払いや移転先未整備で生活苦が強いた。
また、ダム建設が深刻な環境破壊をもたらす一方、スマトラ象などの保護に十分な対策がとられていない。
一方で、中部スマトラ地域の電化率は、1994年の29.41%から2000年には46.15%に上昇し、多数の地域住民および産業が経済的・社会的な便益を享受している。
・貧困の削減や生活条件の改善には持続的な経済発展が欠かせない。
・経済発展は都市化や工業化を不可避とし、自給的な農村社会から消費社会への転換を促進する。
・経済発展に伴い一人当たりのエネルギー消費が上昇するのは世界共通の現象であるため、大規模開発が不可欠の選択肢として浮上する。
・多くの開発途上国では政治的な自由が保障されておらず、汚職や腐敗も少なくない。
・ODAは、受取国政府の能力を高め、最終的には経済発展とともにガバナンスなど開発の阻害要因を解消しようとするための行為でもある。

(2)ODAが日本企業だけを利しているという懸念
・商業主義的性格、つまりODAプロジェクトの掘り起こしから実際の工事までを日本企業が請け負い、企業の利益追求に奔走しているという批判がある。
・1950年代後半、日本企業の国際競争力が弱くODA資金が潤沢でない状況下で、企業利益の確保という国家意思が反映されていたことは明らかである(タイド援助)。
・ひもつき(タイド)援助とは、プロジェクト(特に円借款)の実施にあたって資機材の調達先を日本に限定することであり、ODAによって日本の輸出が増え、日本企業の利益も大きくなる可能性がある。
・現在は国際入札が原則となっている。
・有効なプロジェクトを発掘し、これをODAの対象事業にふさわしいものへと形成していく能力が開発途上国には十分に備わっていないため、日本の商社やコンサルティング会社がこれを代替しているケースがある。
・プロジェクトは受取国政府はもちろん日本政府内で幾度となく審査が繰り返され、発掘から受注までに10年を要するものもある。
・先進国政府には、ODAを通じて国レベルの視野に立った開発を進める役割がある。
・NGOには、現地に密着し開発から取り残された人々を救済し、彼らの意見を代弁する役割がある。
・企業には、利益の極大化を通じて生産活動の活発化に貢献する役割がある。
・天然資源や食糧の輸入依存度が高いにもかかわらず日本が発展しえたのは、原材料、燃料を輸入し、繊維、家電、鉄鋼、自動車など工業製品を輸出にむけるという加工貿易で成功を収めてきたからである。
・自由貿易体制とODAは、他国の安定と繁栄を自国の利益に変える変換装置でもある。

(3)贈与比率が低く、借款が多いという問題
・インフラ整備のための借款中心から、教育・医療などの小規模な贈与プロジェクト中心へとシフトさせるべきだという意見がある。
・日本のODAは東アジアを重視して大規模インフラを構築し、外国直接投資を極めて効率的に展開させる環境を整え、経済発展のエンジンとして急激な成長をつづけた。
・受取国の債務帳消しが繰り返されると、モラルハザードを招き、借款を通じて開発途上国に資金を提供することが難しくなる。
・グローバル化の進展に伴いインフラの整備に民間資金を導入(BOT)する機会が拡大しているが、料金を高く設定し、早く資金を回収しようとする実施主体と、公共性を重視する政府との間に確執が生ずるケースが多い。
・BOT(Build-Operate-Transfer)とは、一定期間後に現地政府に移管することを前提に民間企業がインフラの建設・運営を請け負うもので、民間資金を取り込み、インフラ整備を容易にする効果があるとされている。
・借款は開発途上国の非効率な部門を支援し、構造改革を遅らせてしまうため、市場経済化や競争力の向上を阻害している可能性がある。
・日本がインフラ整備を中心とする現行の借款に固執すれば、供与国・機関の中で、リーダーシップを失う可能性がある。

(4)明確な理念がないという批判
・受取国の開発計画に参画するという「開発」にかかわる側面と、受取国および国際社会にメッセージを発信するという「外交」にかかわる側面があり、バランスを考慮して総合的に供与先や金額を判断せざるをえないという曖昧さが残る。

(5)「米国従属」への反感



本書は、ODAの現状を様々な角度からデータを用いて検証しています。また、今後のあり方も示しており大変勉強になりました。ODAを批判的に捉える方もいますが、本書では公平感を持って考察しています。ODAの概要を知るには最適の書といえるでしょう。

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