貧困の克服―アジア発展の鍵は何か 著者アマルティア・セン (集英社新書)の印象に残った点をまとめます。
欧米の独断場とみなされていた工業化と経済発展の分野に日本が突然出現し、その後共通の特色で東アジア、東南アジア諸国が目をみはるような経済成長を遂げている。
「東アジアの奇跡」は、人間的発展を重視して、国家と市場は相互に補い合うものであるとする「東アジアの戦略」によって実現したものであり、それらを解明する。
市場メカニズムが大きな成功を収めるためには、市場によって提供される機会を、すべての人々が合理的に分かち合う条件が整備されている必要がある。そうすることにより、多くの人々が経済拡大のプロセスに直接参加するとともに、経済変革に参加することが可能になるからである。
市場メカニズムを成功に導く条件
(1)基礎教育の確立
(2)最低限の医療施設の整備
(3)あらゆる経済活動のために不可欠な資源を広範に分かち合い自由に利用できること
これらの実現には、適正な公共政策、多種多様な制度の整備が必要である。
(制度的準備がなされていないと、無制限に情報隠蔽、権力者に有利な独占的な活動、資源濫用の放任等の問題が生じてしまう。)
教育、医療制度の普及による人間的発展により以下のことがもたらされる。
(1)生活の質の向上
識字能力の拡大、平均寿命の伸長、病気による死亡率の低下
(2)生産能力の向上
経済や工業の発展に拍車をかけて、その効率を改善しながら市場経済の規模を拡大する。
発展のために何よりも最初になされるべきは、金持ちや地位の高い人々のためにではなく、むしろ貧しい人々のためになるような、人間的発展と学校教育の普及の実現が必要とされる。
著者センは生活の質を所得や効用を通してみるのではなく、「潜在能力」や「機能」という側面から、人の福利=善い生活(well-being)を評価したり、比較したりする方法を提案した。「潜在能力」の機能の拡大こそ、発展というものの究極的目標であり、それはまた同時に自由の拡大を意味すると述べている。
セン自身による潜在能力の定義
人が善い生活や善い人生を生きるために、どのような状態(being)にありたいのか、そしてどのような行動(doing)をとりたいのかを結びつけることから生じる機能(functionings)の集合
潜在能力は、反省能力と批判的判断力を持つ個人が自由に考えて決めることであり、自分の生活を真に豊かにするためには、どんな状態やどんな行動を取りたいのか考えてみれば、自分の「潜在能力」とは何なのか、すぐに理解できると述べています。
潜在能力の例
・よい栄養状態にあること
・健康な状態を保つこと
・幸せであること
・自分を誇りに思うこと
・人前で恥ずかしがらずに話ができること
・愛する人のそばにいられること
「発展とは、GNP成長、所得や富、また財を生産したり、資本を蓄積したりする以上のことを意味している。ある人が高収入を得ていることは、彼の人生における選択の一つであるかもしれないが、それは人間の生の営みすべてをあらわしているとはいえない」
「発展プロセスは、人々に対して、個人的にも集団的にも、その資質を完全に開花させることを可能にして、また同時に、そのニーズや利害に応じた生産的かつ創造的生活を営むことができるような適切なチャンスを与えてくれる政策環境を創り出さねばならない。人間的発展はしたがって、人間の潜在能力を形成するだけではなく、これらの潜在能力をいかに活用し、発揮させるかということにもかかわっている」
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世界規模での環境破壊、特定地域内での貧困問題、新興国の急速な経済成長、行き過ぎた経済至上主義に対する課題を考える上で、非常に参考になりました。






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